木材“燃えるけど燃えにくい”:木材のセルフ防火メカニズム
2025年6月5日 更新
目次
木材・集成材の耐火性能について
木材は一般的に燃える材料という認識がありますが、その耐火性能は予想以上に高く、特に集成材においてはその特性が顕著です。集成材とは、ひき板(ラミナ)を繊維方向がほぼ平行にして積層接着した木質材料であり、均質な品質と高い強度が特徴です。耐火性能の観点から見ると、集成材は「燃えしろ設計」という考え方に基づき、火災時の安全性が確保されています。
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燃えしろ設計の原理
木材が燃焼する際、表面には炭化層が形成されます。この炭化層は断熱性が高く、内部の木材への熱伝達を遅らせる効果があります。この原理を利用したのが「燃えしろ設計」です。火災時に一定時間(例えば30分、60分)構造耐力上主要な部分が炭化しても、残された健全な部分で構造耐力を維持できるよう、あらかじめ部材の寸法に燃える部分(燃えしろ)を見込んで設計します。つまり、部材全体の厚みの一部が燃焼して炭化層になっても、その内側の健全な部分が建物の荷重を支え続けるように設計するのです。
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炭化速度と耐火時間
木材の炭化速度は、樹種や密度、含水率、表面処理などによって異なりますが、一般的には1分間に0.6mmから1.0mm程度とされています。例えば、設計上60分の耐火時間を求める場合、片面からの炭化であれば約60mm(1mm/分 × 60分)の燃えしろを確保する計算になります。両面から燃焼が想定される柱や梁などでは、その倍の厚みが必要となります。集成材は無垢材に比べて密度が均質であるため、炭化速度も予測しやすく、燃えしろ設計の精度を高めることができます。
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集成材のメリット
高い信頼性: 工場で生産されるため、品質が均一で欠点が少なく、無垢材に比べて強度性能のばらつきが小さいです。これにより、耐火設計の信頼性が向上します。
大規模建築への適用: 大断面の集成材を容易に製造できるため、体育館やホール、商業施設など、大規模な木造建築物において耐火性能を確保しつつ、木材の持つ温かみや美しさを活かした設計が可能です。
特定防火設備・防火構造: 日本の建築基準法では、一定の防火性能を有する建築物に「特定防火設備」や「防火構造」の認定が求められます。集成材を用いた木質防火材料は、これらの認定を取得しているものが多く、木造建築の防火性能向上に寄与しています。例えば、木質耐火パネルなどは、石膏ボードなどの不燃材料と組み合わせることで、より高い耐火性能を実現しています。
まとめ
集成材はその特性と燃えしろ設計という考え方により、火災時においても構造耐力を維持できる高い耐火性能を有しています。これにより、木材の利用範囲が拡大し、より安全で快適な木造建築の普及に貢献しています。
最後までお読みいただきありがとうございました。