建築ロードサイド店舗も実は『木造』です！！
2025年6月30日 更新
目次
近年、ロードサイド店舗の木造化が進む傾向が見られます。これは、環境負荷低減、建設コスト、デザイン性、地域共生といった複数の要因が絡み合って生じています。
まず、環境面では、木材はCO2を固定し、製造時のエネルギー消費も鉄骨やコンクリートに比べて少ないため、地球温暖化対策に貢献します。SDGsへの意識の高まりとともに、企業の環境配慮への取り組みが重視される中で、木造建築は有力な選択肢となっています。
次に、建築コストの面では、鉄骨造に比べて工期が短縮できるケースがあり、それに伴う人件費の削減や、木材自体のコストメリットが生まれることがあります。また木材の品質や加工技術の向上により、耐火性や耐震性も確保できるようになってきています。
こうした要因が複合的に作用し、ロードサイド店舗における木造化の動きは今後も継続していくと予想されます。
実際の事例をご紹介します！
１．サイズ・規模感・使用用途
ロードサイド店舗の使用用途や規模によって木造がいいのか鉄骨造がいいのか、という話になってきます。イメージとしては平屋の７００㎡までであれば、木造で建築するメリットは大きいです。特に「平屋」という要件があれば木造を勧めたくなります！
事例の店舗は自動車販売の店舗・整備工場となります。店舗には店内で車を展示するという広いスペースはなく、商談スペースと事務スペースという中小規模の店舗です。同じ敷地内に自動車整備工場が併設される、という計画でした。自動車整備工場は耐火要件があるので、鉄骨造となりました。
２．構造計画
店舗は間口9.8mで奥行き9.2mと6.8mの平屋です。木造で無柱空間を検討することになりました。
木造で6m以上の空間を無柱で確保する、という要件を聞きますと一瞬「うっ！？」となります。もちろん木造で可能ですが、通常の梁組では厳しくてトラスや大断面構造材が頭をよぎります。トラスや大断面構造材はコストアップや構造検討が複雑になることが想定されます。そこを今回はＴＪＩという木製Ｉ型ビームを採用して、奥行き9.2mと6.8mを無柱空間としました。ＴＪＩは鉄骨Ｉ型鋼と同じようにフランジ：ＬＶＬ、ウェブ：ＯＳＢで構成されています。断面は小さいですが、配置本数を増減することで必要な耐荷重性能を保持します。また軽くて持ち運びがしやすく、配線用貫通孔も開けることができるので、屋根材としては最適です。
屋根材はＴＪＩを採用しまして、土台・柱・梁組はＪＡＳ構造用集成材を使って金物工法で組み上げました。
３．大開口の確保と必要壁量
自動車販売店舗ですので、商談スペースで話をしつつ、屋外展示の車を見る、ということになるので、ある程度の大きなサッシ開口が必要となります。それに対して構造的に必要な壁量という要件もクリアする必要があります。大きなサッシ開口と必要壁量の確保、これを同時にクリアするために今回はサッシ部分にステンレスブレースを採用しました。
直径10㎜の黒いステンレスブレースを斜めにクロスさせて配置しています。サッシ自体が2m×2mほどあるので10㎜の黒いブレースが交差していても、それほど目立たないです。
サッシ枠とブレースの納め方は工夫が必要ですが、開口部も壁として置き換えれる部材としては優れものです。
まとめ
軽量鉄骨で考えてしまいそうな建築物も木造化にするための様々なアイテムがあります。6mを超える空間を無柱で確保するためにはＴＪＩ、大きなサッシ部分も壁として置き換えるためのステンレスブレースなど建物の用途・目的にあわせて提案は可能という事をお分かりいただけたかと思います。
ロードサイド店舗にお立ち寄りの際には外観と内観をじっくりとご覧になって見てください！
最後までお読みいただきありがとうございました。
